業者間のスワップ差を取る「裁定(サヤ取り)」は、どの通貨ペアで組むのが一番効率的なのか。
当サイトが毎日集計している各社のスワップ実績データで、スイスフラン/トルコリラ・南アフリカランド/円・トルコリラ/円の3ペアを比較しました。
結論は明快で、スイスフラン/トルコリラが圧倒的です。
【裁定の仕組み:業者間で両建てする】
同じ通貨ペアを、買スワップが最も高い業者で買い、売スワップが最も有利な業者で売るだけです。買いと売りが同量なので為替の値動きは相殺され、スワップの差額だけが残ります。
以下は2026年7月22日〜8月27日(27営業日)の当サイト集計データによる平均値です。数量は1万通貨・1日あたりで統一しています。
【最良の組み合わせと裁定益】
| 通貨ペア | 買う業者 | 売る業者 | 裁定益 |
|---|---|---|---|
| スイスフラン/トルコリラ | LIGHT FX(−992円) | 外為どっとコム(+1,749円) | +587円/日 |
| 南アフリカランド/円 | みんなのFX(+15.2円) | ソニー銀行(−9.7円) | +5.03円/日 |
| トルコリラ/円 | GMOクリック証券(+25.0円) | くりっく365(−24.4円) | +2.46円/日 |
※スイスフラン/トルコリラは27営業日中24日でこの組み合わせが最良でした。
【年率に直すと】
| スイスフラン/トルコリラ | 南アランド/円 | トルコリラ/円 | |
|---|---|---|---|
| 1万通貨の想定元本 | 197.9万円 | 9.97万円 | 3.31万円 |
| 年間の裁定益 | 214,390円 | 1,836円 | 898円 |
| 想定元本ベースの年率 | 10.83% | 1.84% | 2.71% |
| 必要証拠金のみ(8%) | 135.4% | 23.0% | 33.9% |
| 現実的な資本ベース | 約57% | 約9% | 約16% |
※証拠金は個人の上限レバレッジ25倍(元本の4%)×2脚=8%。「現実的な資本ベース」は、これに各ペアの実測21日間最大変動幅の2倍をバッファとして加えたものです(CHF/TRY 11%、ZAR/JPY 13%、TRY/JPY 9%)。1万通貨あたりの必要資本はそれぞれ約37.6万円・約2.1万円・約0.57万円です。
スイスフラン/トルコリラは、南アフリカランド/円の約6倍、トルコリラ/円の約3.6倍の資本効率という結果になりました。
【なぜスイスフラン/トルコリラだけ突出するのか】
理論値(トルコの政策金利−スイスの金利)で計算すると、1万通貨のスワップは1日あたり約2,100円です。これに対して各社の提示は次のようになっています。
- 外為どっとコム(売):+1,749円 = 理論値の約83%を払い出している
- LIGHT FX・みんなのFX(買):−992円 = 理論値の約47%しか徴収していない
つまりLIGHT FX 側の支払いスワップが他社の半分に抑えられていることが、裁定余地の正体です。異常値ではなく業者ごとのポリシーの差で、当サイトが8月に全社調査したときも同じ傾向でした。
一方で南アフリカランド/円やトルコリラ/円は、各社とも買スワップと売スワップがほぼ対称(買=−売)です。裁定余地は薄くしか残りません。
【意外:値動きはスイスフラン/トルコリラの方が穏やか】
トルコリラが絡むと荒いイメージがありますが、直近1年の実測では逆でした。
| 通貨ペア | 年率ボラティリティ | 1日の最大変動 | 21日の最大変動 |
|---|---|---|---|
| スイスフラン/トルコリラ | 6.8% | 1.4% | 5.5% |
| 南アフリカランド/円 | 11.5% | 3.2% | 6.4% |
| トルコリラ/円 | 7.9% | 2.6% | 4.6% |
トルコリラは「管理された緩やかな下落」が続いているため、日々の跳ねが小さいのです。必要バッファの面でもスイスフラン/トルコリラは不利になりません。
【スプレッドは何日で回収できるか】
| 通貨ペア | 往復コスト(2脚分) | 回収に必要な日数 |
|---|---|---|
| スイスフラン/トルコリラ | 約6,600円 | 約11日 |
| 南アフリカランド/円 | 約290円 | 約58日 |
| トルコリラ/円 | 約280円 | 約118日 |
※スイスフラン/トルコリラは変動スプレッドで公表値がないため、100pips/脚と仮定した試算です。300pips/脚でも回収34日で、結論は変わりません。トルコリラ/円は118日かかり、短期では割に合いません。
【リスクと注意点】
数字は魅力的ですが、これは通常のスワップ投資とは別物のリスクを抱えた手法です。
- 証拠金が一方向に移動し続けます。 スイスフラン/トルコリラは1年で17.5%上昇(=トルコリラ安)しました。売り建てしている外為どっとコム側は1万通貨あたり年約35万円を失い、LIGHT FX 側が同額増えます。損益は相殺されますが、定期的に業者間で資金を移し替える手間が必須です。上の「約57%」は月次リバランスを前提にしています。
- 利回りの源泉は1社のスワップ設定です。 LIGHT FX が支払いスワップを他社水準に戻せば、裁定余地は即座に消えます。観測期間27営業日での裁定益は+245円〜+852円/日と幅がありました。
- トルコリラの急変リスクは直近1年のデータに含まれていません。 2018年は数日で約25%、2021年は1日で約15%下落した実績があります。上記のバッファでは足りません。
- 異業者間の両建てについては、必ず各社の取引規約を確認してください。 特に海外業者との組み合わせは禁止されていることが多く、国内業者同士でも「不当な取引」に関する条項が置かれている場合があります。
- ソニー銀行の南アフリカランド/円スプレッドは当サイト未取得のため、2銭と仮定しています。
結論:スイスフラン/トルコリラが最良で、現実的な資本ベースで年率約57%。南アフリカランド/円(約9%)の6倍、トルコリラ/円(約16%)の3.6倍でした。
ただし利回りの源泉が「1社のスワップ設定の偏り」である以上、いつ消えてもおかしくありません。取り組むなら、規約の確認と資金移動の運用設計をセットで考えてください。
※本記事は当サイトが集計した公開データにもとづく試算であり、特定の取引を推奨するものではありません。スワップポイントは各社の判断で日々変動し、記載の水準が続く保証はありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
